俺の一人語り


手紙

投稿日時:2017/02/07 15:48


なぁ、お前いくらなんでも早すぎねーか。

まだまだやりたい事とかあっただろ?

俺別にお前とすげー仲良かった訳でもなんでもないけど。
だからといって仲悪かった訳でもないし。

まぁ、会えば喋るし。
一緒にメシ食った事もあるし。

そんぐらいだけどさ。

高校卒業後同じ年に。

俺はこの業界に就職して。
お前は美容学校に入学して。

俺の方が先に現場入って。
お前の方が後からサロンに来て。

年は同じだけど先輩、後輩の間柄になって。
俺が講師で教える事もあった。
この業界そんなのはザラにある。

やっぱ年が同じってだけで親近感あって、
講師で行くたびにお前がいれば安心した。

ただ現場に入ったタイミングが、
俺の方がちょい早かっただけで。

ただそれだけ。本当にただそれだけ。

ラーメン食って、タバコ吸って。
コーラ飲んで、またラーメン食って。

「お前、早死にするよ。」
って言ったのを覚えてるよ。


昨日のお通夜。

お前の顔を久々見て。
俺の思いは伝えた。
いい顔してた。

昨日置いてあったシザーケース。
そこに刺さってた一本の黒いハサミ。

あのカチカチ音するやつ。

懐かしいな。

お前の独特な笑い声とハサミの音が。
今もどっかから聞こえる。

お前が死んだって聞いた時。
信じられないのと同時に。
どっか納得して、何かが心に引っかかった。

まだまだやりたい事とかあったはず。

それと。
やっぱりタメだから。
周りは全員ライバルの中で。
数少ないタメだったから。
同じ年齢ってだけでどっか少し安心できたから。

最後の最後だけ。
そうやって一抜けすんのね。

人生全うできたか。

そんなのは誰も知らない。

でもお前なら。
どうなっても笑ってられそうだから。

昨日。
母ちゃんと父ちゃんに会ったけど。
「思い出してやって下さい」
って言ってたけど。

親より先に死ぬのは。
それだけが唯一笑えない。

でもまぁ。
ハサミの音と笑い声は忘れねーよ。

原島。
31年間。

お疲れ。
ありがとう。

黙祷。